オクトーバー・リスト ジェフリー・ディーヴァー

珍しい単発実験小説。シリーズ物で売れてるのにこんな無謀なのを書くというのは、最近は著者もマンネリ化が厳しいし、単発ならではの冒険という感じ。

逆順小説というのは、最近だとフェツェックのアイコレクターがそうだったが、あれは見掛け倒しで終わったけれど、これは本当に完全な逆順進行で、一応、矛盾なく書いてるのが凄い。
もちろん、上手く書けてる一番の理由は全部通しで書いてない所で、章と章の間にかなりの隙間があって、そこであれこれ起こすことで切り抜けているわけだが、、そして、どこまで作者は嘘をついて良いのかの線引きが微妙で、最後に説明される感情面の言い訳を免罪符として許せるなら、という条件も必要か。

小説としては、前半の引きが弱く、翻訳も微妙な出来で、さらに逆順のおかげもあってなかなか読み難いのが厳しい。何も知らない人に読ませるには序盤が難。中盤まで来れば面白くなってきて、終盤は凄い小説を読んだと実感させられるのだが。

細かいところで、この著者の小説でよくあるトリックで、実は過去でXXしていた。みたいなパターンがあるのだが、この本だと逆順なので上手く自然に説明出来ていて、
ある意味この書き方の方が作者には正しいと思ってしまった。