深海のYrr フランク・シェッツィング

最近映像化されたとかで、再販されていたので古いのを探してきて読んでみた。
感想としてはまあまあの出来。力作というか凄い予算で作られた映画みたいな、なんでも入ってて凄いけど微妙というか。。面白いテーマで調査凄いし、物語も悪くないのだが、やっぱり難は登場人物かなあ。

先ずは執筆の為の調査が凄い。専門分野でもないのにここまでやるかと、その結果として蘊蓄が延々書かれてるが、そこが読みたい私のような人にとっては良い感じ。難点はリアルと虚構の境界が怪しいのでしらっと嘘が書かれてるところ位、メタンハイドレートとかこの頃は期待されてたなあとか、北海油田も割ととんでもない環境破壊よねというか、そして日本がくじら絡みで完全に悪役なのが笑った。

ストーリーは思ったより予想外に大事件で、ほとんど彗星破滅物並みのディザスター展開、人類絶滅までいかないけど半分くらいダメかもレベル。もっとも本編読んでるとそんな感じ全然しないのが難。ちゃんと映画みたいなアクションシーンに派手な破壊と爆発もあるし、ただ飛行機にクジラが体当たりするのは最近のサメ映画みたいでリアリティが急落するから止めといた方が良かったかもね(笑

で最後の方はまあまあ上手く着地したけれど、結局何も解決していないというか、陳腐な環境問題で解決させなかったのは良いけど、じゃあどうするの?という。まあご都合主義な解決策が無いのも良いけどね。あとこんな地球規模の異変なんて起こすのも収めるのも数十年単位の話だと思うので1年で収まりましたはないでしょ。

とはいえ科学考証とか、リアリティの積み重ねがしっかりしてるので読んでて違和感ないし、肝心のYrrも飛ばし過ぎず地味過ぎずいい塩梅でこの造形は上手い。やっぱりエイリアンは解り難くかつある程度わかる微妙なところがリアルに感じるからか。安易に挨拶なんてされちゃあ台無しだしね。

問題は登場人物で、奥行きを作るために過去のトラウマとか色々盛ってるんだけど、それがどれもが上手くなく、内面の問題と外側の事件が関係する展開というわけでもないし、物語との絡みも弱くてこの辺の描写必要?という感じ。まあ根本的に人物造形が駄目な感じでもあるのだが。
あとそもそも翻訳が微妙だからか、登場人物多すぎて会話が解り難かったりして読み難いのも困ったところだった。