渚にて ネヴィル・シュート

50年代に書かれた人類終末ものの古典。多分未読、昨今は現実味を増しているので読んでみようかと。本は最近出た新訳版。

あらすじは有名なので、なんとなく核戦争後に残った原子力潜水艦が世界の終わりを、、みたいな話だと思っていたが違っていて、せっかくの原子力潜水艦もさしたる役に立たず、劇的な展開もないまま人類最後の町の生活が静かに書かれる本だった。

戦争についても直接の核攻撃でなくて、死の灰放射能汚染されて人が住めなくなるという設定だけど、死の灰ってこんなではないような、、そもそも核シェルターはどうなったのかと思うのだが、この時代はシェルターが流行る前か?、著者がイギリス人だからか、この手のお約束なサバイバリストも出てこないな。

とにかく淡々とした話で、しかし終末が確実に迫る中で人々は諦めと現実を否定しながら静かな生活を送るという、この寒い静けさが凄いところで、暴力的だったり大声で泣き叫んだりする事もなく、ここまで秩序が維持される生活が続くというのは、ちょっと信じがたいけれども、しかし人類の避けようもない終末なんて事態になれば、こんな風になるのだろうかと思えてしまうのが上手いなと。普通はこういうのは書けないよね。特に最後まで自分だけは助かるのではないかと思いながら時間切れになる姿は悲しいけど身につまされる感じ。

個人的には、子供のころに富士山が爆発して死んじゃうの?と聞いたら、祖母がみんな一緒だからいいんだよみたいなこと言ってた事を思い出した。